6/14/2017

梅雨の合間



飛行機の轟きが

きっかり45度の角度を付けて

微風と共に

窓から飛び込んできた

その音をかき消すように

雀が一斉に鳴き出した

トラックの走行音が

遠くに尾を引いた

被るように

古い自転車は

金属音を撒き散らし

近所の子どもは

引きつって泣き止まず


梅雨の合間

1840分の地上は

天に透明に青く映る

窓を開ることが許される時間は

残り僅か

明日は国防色の雨に

街は占領されるのだ
































06142017



4/28/2017



いつの頃からかは憶えてはいないが

水の中にいるような音がして

いつの頃からかは憶えてはいないが

小川の流れる音に耳をすまし

いつの頃からかは憶えてはいないが

小川が遊歩道なんていう名に変わり

背丈が大人と同じくらいになった頃

水仕事をするようになって

大人になると

水の音に気を留める暇もなく

働いて働いて働いて


店先に並ぶペットボトルの水の束

自由に飛び跳ねるには

グラスの中では狭かろうに































04272017



3/24/2017

無題



彼のお店では

日用品とは正反対のモノを売っています

それはあってもなくても

どちらでもいいモノで

それはそれは輝いているモノなのだそうですが

ヒトによっては

あればあるで訝しみ

なければないで血相を変えて

戸棚の中をひっくり返してしまいます

時々、数にして年に5回ほど

戸棚の中では高い青空が飛び跳ねては驚かせ

また、時として戸棚の中では

50年前の白黒写真を栞のように隠して

整列した活字の行間に挟んでいるのです


彼のお店のモノは

おカネだけでは買えません

モノの原料となる日用品を添えてください

例えば

誰をも悩ませる恋の話とか





































03232017











3/20/2017

相和(「教育ニ関スル勅語」より)



消えてしまえと念じているのでしょう

都合の悪いことを

でも

念じれば念じるほどに

あなたの影は半分薄くなり

あなたの身体の裏側に茂る

低木の輪郭線が

明日にでも透けて

鮮明に見えてしまいそう

だから

あなたは慌てて

衣服を纏おうとしたのですが

どうしたことか

着衣の方法を学んだことがなかった

愚鈍な妻は

あなたには見向きもせず

一日中床に座り込んでは

古ぼけた銀の匙で掬った

蜂蜜を舐めている



























03192017











3/15/2017



どの口が言った

あの口がゆうた

どの口が言った

あの知事の口

どの口が言った

あの官僚の口

どの口が言った

あの議員の口

どの口が言った

あの大臣の口

どの口が言った

あの首相の口

どの口が言った

あの大根と

その大根と

この大根の口

もう一回言ってみろ


幼稚園児よりも

台詞覚えが悪いとは

舞台の袖では氷点下


























03142017

2/19/2017

林檎



知能をもってしまった人間は
食糧を得る道具としての矢を
いつしか人間に向けるように
保身に徹する手段としての銃
銃口は愛する人に狙いを定め
遺されたマグカップの縁には
ロイヤルミルクティがひと雫
微風が揺らす新緑が映る歩道
あれから幾多も寒い雨が降り
耳殻の中で鳴り響く弦楽器の
弦は予告もなく切れてしまい
埃の匂いに混ざり微かに香る
林檎の花の姿を追い求めては
旅が尽き果てることと対峙し
遺されたマグカップの縁には
ロイヤルミルクティがひと雫
覗き込んで見える平和の文字
































2/16/2017


雲という雲は散らばり

稜線は幾重にも集まり

光は水面だけを輝かせ

水は流れに逆らわず

花は音もなく開き

大地には

果てない陰が伸びている


さあ

猫を探して

一番小さい猫を

純白の猫

尻尾は長いが

誰にも触らせたことがない

足跡さえ残さない

猫を探して

あなたの内側に居る猫を




























02162017




1/15/2017

土曜日



夜明け前

カーテンの向こうに星座の傾きを確かめて

朝に

キッチンの窓辺のクレソンの水を交換し

午前中は

お洗濯と合間に読書

お昼時には

クッキーを啄ばみ

午後には

ネットでお買い物

お昼寝の後は

おめかししてお出かけ

今日一日の出来事と

あさってと

5年後の話をするために


こんばんは

こんばんは

夕陽に見惚れていましたら

今夜も10分遅れました


























01152017


12/17/2016

2016ねん12がつ



いもうとがだいじにしてるテディベア
ママがだいじにしてるかぞえきれないがぞう
パパがだいじにしてるおさけがはいったたかそうなビン
ぼくがだいじにしてるロケットのプラモデル

ぼくがわかるのはこれぐらい
あとは
なにを
しんじて
いいのか
わからない



























10/14/2016

外側




外側を歩くんだ
それは
土星のリングの
いちばん外側だったり
ビルの屋上の
あのエッジが効いた
直線ラインだったり

見てごらん
真ん中に陣取ってる彼らを

波打ち際に
近づく魚だけが
砂漠の触感を知っている
























8/21/2016

表裏



標的に当てればメダルが貰える
標的に当たれば
その下に子どもが埋もれてる

全力で走ればメダルが貰える
全力で走れ
爆薬を避けなくては

遠くに飛ばせばメダルが貰える
遠くまで飛んで行く
家のない渡り鳥

速く泳げばメダルが貰える
速くも遅くも泳げない
小さい小さい
黒い靴





















4/22/2016

ピザの対価



いつも引くのは
貧乏くじで
それでもなんとか生きてきた
雑草扱いは
毎日のように
日陰の寒さにも慣れた
それでもなんとか生きてきた
月の満ち欠けに
溜め息をつき
雑踏に紛れ込んだ
何かを蹴飛ばしたくもなったが
蹴飛ばすものが無かった
新しい靴を買おう
私は
まだ歩かねばならない

家と仕事を同時に失った時があった
暫くして
財布の中には小銭以外見つからなかった
幼い娘が「ピザが食べたい」と言った
着物を売って
大きなピザを買った

まだ私たちは
確かに生きている




















3/31/2016

八重の桜



成長が遅い八重の桜
いつまで待っても
背が伸びず
大木の桜の下で
人々は上を見上げて
見上げて
見上げて
新緑が誇らしく
顔をのぞかせる頃
桜の花など皆
遠い昔の写真になった頃
八重の花は
静かに
たわわに
花開く

見始めは寒桜
見頃はソメイヨシノ
見納めは八重桜
酔人を知らぬ八重の桜
見上げるのは
子どもたち























1/18/2016











シャルリー・エブド
私はあの漫画を表現の自由だとは認めない。
これは死ぬまで。
そして死んでからも。










12/30/2015

来年



来年は
鬼が笑う
閻魔大王が笑う
地獄への入口が
あんぐりと口を開けて笑う
首相が笑う
大統領が笑う
地獄への入口が
あんぐりと口を開けて笑う
















12/19/2015



私にとって一遍の詩は
一枚の絵画であり
一皿の料理であり
一冊の本の表紙であり

本の中身は
ノンフィクション
フィクション
私小説
随筆
ジャンルは読者が決めてくれる
私はただ
暗がりの中にしゃがみ込んで
黙々と
コツコツと
表紙の上を撫でている
保育器の中の乳飲み子が
息をしているかを
確かめるかのように




























12/05/2015

写真



広場には人影がまばらで
それでいて人影が途切れることが無く
白っちゃけた全体像には
無言で歩く人と人
そこが広場だと確認できるのは
広場を一周する屋根付きの回廊で囲まれているからで
石灰岩のような壁には小窓が灯りを取り入れて
男は黒いスーツに丸みを帯びた帽子を被り
女は細身のドレス
小さな傘を持って歩く
18世紀末には暑い昼
傘の影が
女の肩に吸い込まれ
男は
この世に女などいないといった素振りを見せては出口へ向かう
土埃が明日を舞い上がらせているのは
写真が飾られている部屋の温度が冷たいせいである
































9/27/2015

善良な市民



彼らは途方も無く
飢えていた
飢えが飢えを手繰り寄せ
渇きは渇きを目覚めさせる

ありとあらゆる料理を
あらん限りの食材を
あとは子どもだ
子どもを食べようと
彼らは
お菓子を振る舞った

ひとかけらの砂糖菓子に
あちらこちらで
子どもたちが群がる
彼らが後手に隠し持つものは
砂糖菓子よりも軽い
一枚の契約書
二度と帰らぬ時間と引き換えに

今日も
仕事の合間に居眠し
猫が転んだと笑い
流れるニュースに涙する彼らは
所謂
善良な市民


























09272015 4:39













8/28/2015

個体



土壁にうっすらと
縦に入ったひび割れを
銀のかんざしの先で
こじ開けた
続けて
両手の
人差し指と
中指と
薬指の
爪の先で
こじ開けた

柱ごと
動く壁
天井は
横に伸びる

光が差し込んでもよいほどの
外は秋
なのに
壁に空いた隙は
吸い込まれる暗黒
奥で蠢くのは
無数の偽物


傍らの本の内部で
家鴨が劈く声で鳴いた
家鴨が劈く声で鳴いた
ご飯が炊ける匂いがして
ふいに
8歳に戻っていた
母が私を探してる
私は母を探さない




































8/23/2015

「日本」



「日本」という文字には
二通りの響きがあって

「にほん」の響きには
登山用の杖を差し出したくなって
「ニッポン」の響きには
まあここらで一息ついてくださいなと
お茶を入れたくなる
どちらも「日本」には違いないし
どちらも「日本」ではないのかもしれない

猿真似に熱心な政治家は
他人事のように
明日の話をしたがるが
情けないことに
今夜の夕餉の献立でさえ
まだ
自身で決めかねている
割れた角皿と
折れた箸にしがみつきながら