天上

天上はすぐそこ

自転車で5分

自動車で55分

歩いて5秒もかからない

階段を上ったり

詩集の裏側を探しても

天上はそこには無い

人々は今日も口々に

正しさとは何かを言い合い、競う

横でストーブの炎が聞いている

炎はプロメテウスの子孫らしいが

たったひとつの天上への入口の鍵を

失くしてしまったと

おろおろと揺れている

人々は暖かい部屋で微睡みながら

正しさとは何かを言い合い、競う

12282018

じゃんけん

じゃんけんしないか？

わたしがかったら

わたしはほたるになるから

きみはにんげんになりたまえ

そして

おそってくるといわれているひのたまに

きみはおびえてくらしたまえ

あすは

みぐるみはがされるかもしれないから

きみはおびえてくらしたまえ

あさっては

つまがねとられるかもしれないから

きみはおびえてくらしたまえ

らいねんのなつ

わたしはいろっぽいおすと

あそんでいるときに

きみはどこかのくにのようじんにでもなって

せけんにしゅうたいをさらし

へらへらとくちもとをだらしなくうごかしていたまえ

ねぇ、じゃんけんしようか？

12062018

京都

「美味しいですよ」と強く弾むアクセントで話しかける

おばあさんの身長は150センチにも満たない

ショッピングカーを引きながら

下り坂をゆっくりとした足取りで歩く

「おおきに」とのったり話すおかみさん

お出汁の香りが立ち込めるうどん屋

満席なのになぜか時間が止まったようで

白い三角巾を被る家柄じゃない品の良さ

「お茶どうぞ」と小さくもしっかりとした声

ガラスに囲われた中から動きが早いおかあさん

八ッ橋は銀閣寺の側で板の下鉄板の上

何回その角度のお辞儀をしたのだろう

「おばあちゃんがゆうてはりましたわ」と笑う

伏見の煎餅屋の二代目の奥さん

息子さんが後を継いで煎餅を焼いていると話す

自慢の狐のお面の包み紙は真っ赤っか

自慢の狐のお面の包み紙は真っ赤っか

20181018

文字は踊る

文字は踊る

紙の上

ディスプレイの上

できれば品良く

でも

皆

ダンスが上手いとは限らない

下手なダンスに

投げつけるのはビール瓶

辺りは泡だらけ

辺りは泡だらけ

辺りは泡だらけ

辺りは泡だらけ

辺りは泡だらけ

辺りは泡だらけ

辺りは泡だらけ

辺りは泡だらけ

辺りは白い泡だらけで

文字が隠れてる

でも

隠れているだけだ

明日の朝には

何食わぬ顔で

会社に向かう

09252018

奥様劇場「お水」

奥様A「ちょっと奥様、また水道代が値上げするらしいざますわよ」

奥様B「まぁそうざますの？厭ざますわねぇ」

奥様A「厭ざますわねぇ。つい先月に1リットルにつき1万円値上げしたばかりざますのに...」

奥様B「連日のこの暑さじゃお洗濯の回数も増えるざますしねぇ」

奥様A「そうざますそうざます、うちのひとり息子なんかサッカー部ざますから、お洗濯は毎日ざます」

奥様B「それは大変ざますねぇ。あ！奥様、今日のアマゾンタイムセールご覧になられたざますか？今日はお水がセールになってるざますわよ！」

奥様A「まぁ！そうざますの？早速うちのボクちゃんの好きなクリスタルカイザーを50000本ほど注文するざますわ！息子はクリスタルカイザーで洗ったユニフォームがお気に入りざますの」

奥様B「うちも並行輸入のコントレックスを30000本買ったざますわ。やっぱりセールの時に買い溜めしておかないと」

奥様A「あら奥様、お洗濯にコントレックスは硬すぎませんこと？」

奥様B「ええ、ですからヴォルヴィックで倍に希釈するとちょうどいいざますわ。たまに贅沢したい気分の時はペリエで希釈するざます」

奥様A「まぁなんて贅沢ざます、羨ましい限りざますわ」

奥様B「いえ、うちはそれほどでも。それよりも奥様ご存知？水沢さんのお宅ではお風呂に水道水を使っていらっしゃるのですって！」

奥様A「まぁ信じられない！そうでしたざますか！なんて贅沢ざます！さすが飲料メーカーにお勤めだけのことはある水沢さんざます。贅を尽くすとはこのことざますわ、ホントに上を見るとキリがないざますわねぇ」

奥様B「ええ、ええ、仰る通りざますわ。それはそうと、我が家は来月に引っ越すことになりましたの。買い溜めしたお水が敷地内に入らなくなってしまって、もっと広い敷地が要りようになったざます。引っ越し先は緑溢れる自然に囲まれたところざます。宅の主人の通勤にもほんの2時間ちょっと。奥様もぜひ遊びにいらしてくださいざます。場所は奥多摩湖のすぐ近くの.....ねぇ奥様、お水ごときに湯水のようにお金を使うことになろうとは、思ってもみなかったざますわよねぇ...」

おしまい。

07062018

三次元

夕方

外から帰った我が子の

冷たい手を

両手で挟んで温めたり

買い物先で

手に取ったグリーンピースを

まだもう少し早いと

棚に戻してみたり

あちらは開花だと聞いて

こちらの蕾に

一方的に眼差しを送り

旅に行きたいと

一年中口遊み

疲れたと横になっても

疲れを忘れることはなく

扉を開けた

スマートフォンの画面の隅

色が変わりかけているのは

おそらくは

社会の軋みに

耐えかねているのしょう

二次元で騒がれている芥の出所は

西に傾いた椅子の上

ペシャンコになった座布団の上

でもこれは

まさしく三次元での事実なのです

03172018

スケープゴートは夢を見ない

頭上に浮かぶは鯉の餌

今夜は春の雨が降り注ぐ

ふやけた姿はあの顔にそっくりだ

どうやら目も鼻も無いようだ

一番大事な耳は機能不全

「話を進めてください」

聴こえないのか

それとも

言語理解力が

並外れて劣っているのか

スケープゴートは

夢を見ない

無数の

軍靴の音も聴こえない

これから始まろうとしている儀式に

参列しようとしている愚か者だ

無数の

期待の前に晒されながら

四角い台の上に乗せられるのは

お前だ

03172018

山口県に住みたいな(フランク・ザッパ的な)

山口県に住みたいな

本州の西の端

山口県に住みたいな

吉田松陰て誰ですか

山口県に住みたいな

伊藤博文は悪魔です

山口県に住みたいな

A級戦犯は裏切り者

山口県に住みたいな

特産品は河豚と河豚

山口県に住みたいな

豚が田植えをしています

山口県に住みたいな

そこは日本のパラダイス

山口県に住みたいな

自衛隊の基地もある

山口県に住みたいな

米軍基地も造りましょう

山口県に住みたいな

オスプレイには手を振って

山口県に住みたいな

ド田舎に憧れていたのです

山口県に住みたいな

教養は飯の種にはなりゃしない

山口県に住みたいな

文化はないがカネはある

山口県に住みたいな

知性はないがカネはある

山口県に住みたいな

山口4区に住みたいな

投票権も手に入る

02052018