空っぽの部屋を小窓から覗く
中には何もないことくらい
曇り空だったあの日から
誰もがわかっている
中は真っ白だったのに
少しずつ壁に傷が付いて
もう何色なのかもわからない
古臭いネオン管が砕け
靴底の下でシャラシャラ笑う
小窓の白い枠の中に
今日も忍び込む黒い煙
男がひとりでそれを見ている
子どもたちは蝶を追いかけて
街からいなくなった
これは始まり
空虚は始まりの合図
その縁に立つ者
その縁に佇む者
その縁を眺める者
その中に歩みを進める者
その中に転げる者
その中に飛び込む者
その方法を決めることは
いついかなる時も自由
20220521