1/18/2013

青い放課後




「俺もさあ、大阪市の生徒みたいに自殺しよっかなーってさ」
「マジ⁈マジ⁈マジ⁈なにその軽い感じで、なにお前、お前も部活で顧問に殴られたりすんの?それ重いなあー重いよ、あー重いって」
「なに?じゃお前、部活で顧問に殴られたりしないのかよ」
「...い、いやだからさ、俺が言ってるのはさ、いや俺も殴られるよ、殴られっぱなしじゃん?だからさ遺書なんて書いて顧問に送りつけよーかなってさ」
「...お前さ、漢字書けないじゃん。2学期の国語の期末12点だったじゃん。四字熟語の解答欄に『美人白米』って書いたじゃん。意味は『あきたこまち』って書いたじゃん、で美人は男のことで小町は女のことじゃん...」
「...あ、あれはさ、問題をひとつ飛ばしちゃったからでさ、お前だって『竜頭蛇尾』の意味を『石の付く人』って俺だからわかるようなもんでさ、国語の先生さ女だし寝る前に毎晩万葉集読む独身の先生だよ今年43だよ、あれだよ石の付く人は玉木宏の真横に並ぶとだな、ダヴィンチ真っ青の遠近法になる顔の大きさが成立するってことだろ?意味はさ画法がセザンヌ風じゃないってことだろ?」
「当たり」
「やっぱそーじゃん!それにお前の世界史のテストだって11点だったから俺の方が上ってことだよな」
「え?...ったくお前わかってねーなー、よく聞けよ、いいか、なまじ歴史なんてものにのめり込んだらさ、権力欲しくなるじゃん?部活の顧問教諭なんて目じゃねーよ、俺がさこの俺がだよ、もし国家を牛耳ることにでもなったらさ、お前どーする?カッケーなんてもんじゃないじゃん?」
「...お前が立候補すんの?ヤバくね?動物愛護団体から動物をむやみに労働させるなって抗議されるってわかってんの?てかお前社会のことわかってんの?こないだだって俺にタカとハトがいるのになんでニワトリがいないんだって訊いてたじゃん」
「...そ、それはさあー、ニワトリは3歩歩いたら忘れるからかなあって、青少年の素朴な疑問てやつよby Eテレ、クククッ」
「...公約直ぐ忘れるじゃん」
「お前、シカトしてんじゃねーよ、間髪を容れずツッコミ入れてくれないとさー」
「ずーっと昔っから俺らが生まれる前から政治家って直ぐ忘れるから政治家でいられるじゃん...あ...おいお前って結構頭いいじゃん、なんだろうこの遠い雲を眺めたくなる嫉妬心」
「いやもういいからさー、俺のボケをシカトするなって。まあ俺だって弟の小学生新聞読んでるからさ少しはさ、総ルビ打ってるからお前でも読めるんじゃね?俺の弟、頭いいんだよ、で顔から性格から全部じーちゃん似なんだって、俺は隣んちのおじさん似だってかーちゃんが言ってた。それがマジ当たっててさ、さすが俺のかーちゃんだけあって洞察力に長けてんだよ」
「いや俺もさ、今だから打ち明けるけどお前んちのじーちゃんとお前の弟、親子みたいに瓜二つじゃんてさ、てかお前のかーちゃんてなんかすっげーなってさ、てかお前と話してて思ったんだけど、俺たち知性に溢れてね?」
「だよなだよなだよな、お前もそー思う?」
「思う...」
「じゃあさじゃあさもうさ、今日の部活ばっくれるってことにしてさ」
「うん」
「なんなら全部員で退部届け出しちゃうっていうことにしてさ」
「うん」
「体罰反対運動起こして全国行脚に出るって、これは知性の...知性の...この続きはお前言えよ」
「厭だよ、お前とずっと一緒に行脚なんて、それより暴力を含む体罰やめてもらうよう部員集めて顧問に話してみないか?それでも続くようならサッカー部と野球部は体罰がないって聞いたからさ、そのことも話してさ」
「うわっ、それお前にしては最初で最後のいいアイディア、なんか尊敬しちゃうじゃん」
「あーお前の歯が浮いた音聞こえた、てかお前からスポーツ取ったらなあーんにもなあーんにも残らないじゃん?俺はさイケメンだし人気者だしジャニーズ系バリのルックスだから芸能人になろうと思えばさ」
「美人白米」
「うっせー、それより俺見ちゃったんだ、お前の国語辞典さ1423ページの次のページ、1507ページじゃん。なにあれ?あ、ま、まさかお前...美味いの..か?」
「頼む!動物愛護団体にだけは内緒にしといてくれ!ははっ」
「ばあーか、あははっ」





1/11/2013

【Jan/11/2013】




不整のリズムで反射する板硝子の陽光が、眼底に飛び込む。
事務所の一室で、デスクを挟んで正面に立つは、痩せ型で七三分けの年の頃なら40過ぎの白っぽいYシャツを着た草食系の男の人。耳を塞ぎたくなるほどの彼の連続した力強い口調により、意識は次第に聴覚を拒絶し始めていた。彼がしっかりと握り締め両手で盆のように持つは、額縁のような、長方形のチョコレート色の木枠の中に板硝子を嵌め込んだ物体。眩しくて、額縁なのか、その正体に確信は持てなかった。
硝子は手作りの板硝子。反射光は歪な面の上ををゆらゆらと躊躇う。
それは、今年の初夢だった。


手作りの板硝子を通しての窓の外の景色は、虚構の世界。
景色全体の線が僅かに歪曲しては、事実が遠退いて見える。
それは、不動に美しい。

時々、色も疑う。
草木の青さや降り積もる雪の白さや紅い唇を。
世塵に紛れての如才無い色あいが、いずれ流れ落ちてしまうのではないかと疑う。
ゆっくりと来て、雨男。

夢が夢で終わるから夢で
現実が現実の中で現実として終わり。
始まりの現実は夢の続き。
冬の東京の透ける青空が、ザラっと錆び付いてしまわぬうちに。




1/01/2013

【Jan/01/2013】



明けましておめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

早速ですが、年頭におきまして今年の抱負を。

「上品であれ」

今年こそは羽目を外さぬよう、心して過ごしたく存じます。

この一年が、皆様にとって幸多き年になりますように。

平成二十五年 元旦