1/11/2013

【Jan/11/2013】




不整のリズムで反射する板硝子の陽光が、眼底に飛び込む。
事務所の一室で、デスクを挟んで正面に立つは、痩せ型で七三分けの年の頃なら40過ぎの白っぽいYシャツを着た草食系の男の人。耳を塞ぎたくなるほどの彼の連続した力強い口調により、意識は次第に聴覚を拒絶し始めていた。彼がしっかりと握り締め両手で盆のように持つは、額縁のような、長方形のチョコレート色の木枠の中に板硝子を嵌め込んだ物体。眩しくて、額縁なのか、その正体に確信は持てなかった。
硝子は手作りの板硝子。反射光は歪な面の上ををゆらゆらと躊躇う。
それは、今年の初夢だった。


手作りの板硝子を通しての窓の外の景色は、虚構の世界。
景色全体の線が僅かに歪曲しては、事実が遠退いて見える。
それは、不動に美しい。

時々、色も疑う。
草木の青さや降り積もる雪の白さや紅い唇を。
世塵に紛れての如才無い色あいが、いずれ流れ落ちてしまうのではないかと疑う。
ゆっくりと来て、雨男。

夢が夢で終わるから夢で
現実が現実の中で現実として終わり。
始まりの現実は夢の続き。
冬の東京の透ける青空が、ザラっと錆び付いてしまわぬうちに。




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