Marilyn R.「現実と幻想の脈拍数によって擬人化する反論理的飄逸生活助長活用法に共感あるいは相対を反覆する非日常浮遊説の錯乱」
1/14/2024
紙皿ではない
9/21/2023
巧言令色
さあ
この美しい手をご覧になって
この手の色は白く
この手の形は隙がなく
この手には温もりがない
完璧な手
握ったことも
放したことも
運んだことも
投げたことも
持ち上げたこともない
完璧な手
さあ
この美しい手をご覧になって
子どもに料理を作ったことも
シャツにボタンをつけたことも
雑巾を搾ったことも
土に種を植えたこともない
完璧な手
さあ
この美しい手をご覧になって
作り物のような
人形のような
偽物のような
上辺を取り繕うだけの
完璧な手を
09212023
8/27/2023
炎が天で
自分の部屋は自分の歴史
本の表紙に付いた滲も
日に焼けたカーテンも
柱の擦り減った角も
それは全て自分の歴史
思い出はいつか古ぼけて
いずれ美しく輝いてほしいと
願っても
残るのは砂粒ひとつ
その砂粒を共有しようと
人はまた今日も
誰かと連れ立っては旅に出る
風は見ていた
でも風の言葉は
我々には通じない
海は徐々に腐り
山は悲鳴を上げて疲れ果て
炎が天で
上機嫌で
歌ってる
08272023
7/27/2023
彷彿
藍色は走る
瞬きは星の煌めきと
同じ速さだから
おそらくは闇は過ぎ去り
光はレースでも編んでは
時間を潰している
水は笑いすぎてしまい
口が閉じなくなってしまった
言葉が無限に溢れ出し
もう行き先を見失った
風は回り続け
白紙は彼方で佇み
途方に暮れている
卵が割れた
卵が割れた
生まれてくるのはだあれ
07/26/2023
5/23/2023
誕生日
4年前の今日
君は生まれた
それから少しして
君はうちに来た
毛むくじゃらの君は
毛むくじゃらの愛らしさを発揮して
毛むくじゃらのまま大きくなった
君がうちに来た時
君を一生を護ると決めたが
いつしか君は
私を護ってくれている
今日は雨
君は毛繕いに忙しく
そのあとずーっと寝っぱなし
誕生日のご馳走の
皿の上の
鰹は干からびてきた
それでいいんだ
好きなように生きればいいんだ
05/23/2023
5/21/2022
始まりの合図
空っぽの部屋を小窓から覗く
中には何もないことくらい
曇り空だったあの日から
誰もがわかっている
中は真っ白だったのに
少しずつ壁に傷が付いて
もう何色なのかもわからない
古臭いネオン管が砕け
靴底の下でシャラシャラ笑う
小窓の白い枠の中に
今日も忍び込む黒い煙
男がひとりでそれを見ている
子どもたちは蝶を追いかけて
街からいなくなった
これは始まり
空虚は始まりの合図
その縁に立つ者
その縁に佇む者
その縁を眺める者
その中に歩みを進める者
その中に転げる者
その中に飛び込む者
その方法を決めることは
いついかなる時も自由
20220521