6/07/2025

大きい奴隷と小さい奴隷


大きい奴隷は小さい奴隷を慰めた

お前は小さいから

労働が辛いだろうと

小さい奴隷も大きい奴隷を慰めた

お前は大きいから

力仕事ばかりで大変だろうと

小さい奴隷は

力がないから

食事のパンを

他の卑しい奴隷たちに取られてしまい

遂に奴隷のままで死んだ

大きい奴隷は悲しんだ

大きいから奴隷を慰める人はいない

大きい奴隷は奴隷のままで

首を吊って死んだ
















06072025

3/20/2025

動く



今日もあの海辺では

罪のない人々が

空からの悪意に逃げ惑う

海を渡り

着いた陸では

記憶を忘却しようとした人々が

まやかしの未来に

歓喜するふりをしている

脳の片隅に

埃に塗れて動かぬ子ども

押しのけても

押しのけても

その記憶も動かない

作り笑いに引き攣る口元

テーブルの上の肉だけが

ぐにゃぐにゃと動き出す

あの海辺を目指して

あの泣き叫ぶ

子どもたちを目指して






















03202025


10/26/2024

あなたにはあなたの


あなたは朝起きて鏡を見る

そして少し二重になった顎を見て

こう思うのだ

もう少し痩せなければと

あなたは電車や自動車に乗る

そしてビルが建ち並ぶ景色を見て

こう思うのだ

あのビルも古くなったと

あなたは機嫌が悪い上司に接する

そして自分の縒れた服を見て

こう思うのだ

こんな職場は早く辞めてやると

あなたは仕事帰りに食事をする

そして少ないビールの泡を見て

こう思うのだ

下戸にビールを注がせるなと


あなたはスマホを取り出して

SNSを開く

そう、あなたにはあなたの幸せがある

そう、私には私の幸せがある

小さい液晶画面から届く動画

負傷した妹を担ぐ幼い姉は

靴を履いていない

頭が半分吹き飛ばされた

子どもの死体

頭を全部失ってしまい

誰かわからない子どもの死体


あなたにはあなたの幸せがあるが

私には私の幸せがあるが

確かにあの子どもたちにも

子どもたちの幸せが

あったのだ









































10252024


1/14/2024

紙皿ではない



きみが
使い捨てだと思っている紙皿は
あいにく
何度テーブルから落としても
割れたり
壊れたりすることはない
そして
それは使い捨ての紙皿なんかではない
きみは
随分と20世紀を生きすぎてしまい
時の流れを見失い
干からびては
固くなり
動けなくなってしまったようだ
いつしかきみは
古い古い石碑のように風化して
刻まれた文字や印さえ
誰も読むことができなくなる
もう読む必要もないのだろう
きみが
使い捨ての紙皿だと思っていたものは
これからも成長を続け
子孫を増やし
きみがどんなに醜い奴かを
口々にして
永久に語り続けることだろう
あいにくだが
我々は
何度テーブルから落とされても
割れたり
壊れたりはしないのでね





























01/14/2024








9/21/2023

巧言令色



さあ

この美しい手をご覧になって

この手の色は白く

この手の形は隙がなく

この手には温もりがない

完璧な手

握ったことも

放したことも

運んだことも

投げたことも

持ち上げたこともない

完璧な手

さあ

この美しい手をご覧になって

子どもに料理を作ったことも

シャツにボタンをつけたことも

雑巾を搾ったことも

土に種を植えたこともない

完璧な手

さあ

この美しい手をご覧になって

作り物のような

人形のような

偽物のような

上辺を取り繕うだけの

完璧な手を





















09212023