今日もあの海辺では
罪のない人々が
空からの悪意に逃げ惑う
海を渡り
着いた陸では
記憶を忘却しようとした人々が
まやかしの未来に
歓喜するふりをしている
脳の片隅に
埃に塗れて動かぬ子ども
押しのけても
押しのけても
その記憶も動かない
作り笑いに引き攣る口元
テーブルの上の肉だけが
ぐにゃぐにゃと動き出す
あの海辺を目指して
あの泣き叫ぶ
子どもたちを目指して
03202025
今日もあの海辺では
罪のない人々が
空からの悪意に逃げ惑う
海を渡り
着いた陸では
記憶を忘却しようとした人々が
まやかしの未来に
歓喜するふりをしている
脳の片隅に
埃に塗れて動かぬ子ども
押しのけても
押しのけても
その記憶も動かない
作り笑いに引き攣る口元
テーブルの上の肉だけが
ぐにゃぐにゃと動き出す
あの海辺を目指して
あの泣き叫ぶ
子どもたちを目指して
03202025
あなたは朝起きて鏡を見る
そして少し二重になった顎を見て
こう思うのだ
もう少し痩せなければと
あなたは電車や自動車に乗る
そしてビルが建ち並ぶ景色を見て
こう思うのだ
あのビルも古くなったと
あなたは機嫌が悪い上司に接する
そして自分の縒れた服を見て
こう思うのだ
こんな職場は早く辞めてやると
あなたは仕事帰りに食事をする
そして少ないビールの泡を見て
こう思うのだ
下戸にビールを注がせるなと
あなたはスマホを取り出して
SNSを開く
そう、あなたにはあなたの幸せがある
そう、私には私の幸せがある
小さい液晶画面から届く動画
負傷した妹を担ぐ幼い姉は
靴を履いていない
頭が半分吹き飛ばされた
子どもの死体
頭を全部失ってしまい
誰かわからない子どもの死体
あなたにはあなたの幸せがあるが
私には私の幸せがあるが
確かにあの子どもたちにも
子どもたちの幸せが
あったのだ
10252024
さあ
この美しい手をご覧になって
この手の色は白く
この手の形は隙がなく
この手には温もりがない
完璧な手
握ったことも
放したことも
運んだことも
投げたことも
持ち上げたこともない
完璧な手
さあ
この美しい手をご覧になって
子どもに料理を作ったことも
シャツにボタンをつけたことも
雑巾を搾ったことも
土に種を植えたこともない
完璧な手
さあ
この美しい手をご覧になって
作り物のような
人形のような
偽物のような
上辺を取り繕うだけの
完璧な手を
09212023
自分の部屋は自分の歴史
本の表紙に付いた滲も
日に焼けたカーテンも
柱の擦り減った角も
それは全て自分の歴史
思い出はいつか古ぼけて
いずれ美しく輝いてほしいと
願っても
残るのは砂粒ひとつ
その砂粒を共有しようと
人はまた今日も
誰かと連れ立っては旅に出る
風は見ていた
でも風の言葉は
我々には通じない
海は徐々に腐り
山は悲鳴を上げて疲れ果て
炎が天で
上機嫌で
歌ってる
08272023